強直性脊椎炎の特徴・検査・診断・治療
強直性脊椎炎の特徴
強直性脊椎炎患者さんの男女比は約3:1で、ほとんどの患者さんは、45歳未満で発症します。強直性脊椎炎は一般的な腰痛とは異なり、放置していても症状は改善しません。 まずは原因や症状・鑑別すべき疾患・治療を知ることが大切です。

強直性脊椎炎の検査・診断・治療
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診断のための検査強直性脊椎炎の診断には、
一般に画像検査や血液検査を行います。-
1.画像検査
X線による画像検査が中心で、腰の周辺を撮影します。仙腸関節(せんちょうかんせつ)と呼ばれる関節の様子(関節のすきまの程度や、骨の状態)を観察します。この部位から病気が始まることが知られています。
CTやMRIによる検査が行われることがあります。MRI検査は早期診断に有用です。
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2.血液検査
強直性脊椎炎に関連がある白血球にある抗原のHLA-B27という因子の有無を確認したり、炎症の程度を把握するためにCRPというマーカーを調べることがあります。
日本人の強直性脊椎炎の患者さんの約75%がHLA-B27を保有すると報告されています。HLA検査は保険適用になっていません。
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診断
長引く腰痛があり、炎症性腰背部痛の基準を満たした場合、強直性脊椎炎の可能性が高くなります。
強直性脊椎炎の診断には、通常はX線などの画像診断、背骨や股関節の動きを調べる検査、さらに白血球の型や炎症の程度を調べるための血液検査を行い、強直性脊椎炎の分類基準を参考に、鑑別疾患を除外したうえで診断されます。
一般的には、改訂ニューヨーク基準や国際脊椎関節炎評価会(ASAS)による分類基準を参考に診断作業が行われます。
改訂ニューヨーク基準について
診断には、これまでの経験や鑑別疾患の知識などが必要で、診断に時間がかかることがあり、診断が難しいことが多いことも特徴です。このため、診断エラーが起こりやすいことも知られています。強直性脊椎炎の診断は決して簡単なものではありません。
診断の作業には鑑別・除外診断の作業が重要です。
鑑別すべき疾患を表に示します。強直性脊椎炎と鑑別すべき疾患 びまん性特発性骨増殖症 腰椎椎間板ヘルニア 化膿性脊椎炎・脊椎カリエス 掌蹠膿疱症性骨関節炎 SAPHO症候群 線維筋痛症 硬化性腸骨骨炎 変形性脊椎症・変形性仙腸関節症 その他の脊椎関節炎
(炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎、乾癬性関節炎、 反応性関節炎) 脊椎関節炎診療の手引き より改変
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治療
強直性脊椎炎と確定診断されると治療が始まります。
薬剤治療によって痛みを抑えながら積極的に体を動かすことで痛みを軽くしたり、脊椎や関節の動きに制限がかからないようにして、こわばり感を抑えることが期待できます。
強直性脊椎炎の治療は、薬剤による治療や運動療法などが推奨されています。
投薬による治療
- 第一選択薬
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- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 一部の末梢関節主体のケースで有用な場合もある薬剤
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- 抗リウマチ薬
- ステロイド薬(局部注射)
- 激しい炎症・疼痛が続き、生活に著しい障害のあるケースで適応となる薬剤
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- TNF阻害剤
- IL17阻害剤
- JAK阻害剤
難病情報センター 強直性脊椎炎(指定難病271)
(http://www.nanbyou.or.jp/entry/4848)
2023年10月16日確認
ACR SPARTAN治療推奨2019
Ward MM et al.: Arthritis rheumatol, 71,10: 1599–1613(2019)
強直性脊椎炎チェックシート
国際脊椎関節炎評価会
(ASAS)による
体軸性脊椎関節炎の分類基準
ASASから提唱されている、脊椎関節炎を早期に分類するための分類基準
分類基準は、診断された患者さんを治験などの研究に組み込む際に確実な疾患を有するものとしてふるい分ける基準です。診断の際には参考になりますが、診断には鑑別・除外診断など診断のための多くの作業が必要です。
van der Heijde D, et al.: Ann Rheum Dis. 70, 6: 905-908(2011)
Rudwaleit M, et al.: Ann Rheum Dis. 68, 6: 777-783(2009)
ASDAS、BASDAI、BASFI、BASMI の4つの指標から強直性脊椎炎の状態を測定し、判定することができます。